私はかつらの中で「すっぽり」という毛のない部分もかつらにしてしまう発想が凄いなと思います。

すっぽりは、角(すみ)が入れば「夏祭」団七のような強い男になり、角を甘くすれば「乗合船」の才造のような田舎者にもなります。また、ぼかしを附けないと時代なかつらにもなります。

「浜松風」の此兵衛は油付銀台三本車鬢のつぶで、青岱(せいたい)に銀を混ぜてより浮世絵風に見るような古風さが出ています。

「供奴」は油付すっぽり唐鬢ばらの椎茸。というかつらです。
参勤交代をする際に大名たちは自分の藩が一番猛者(もさ)をそろえていると自慢をしていました。寒くても尻を出し、風が吹いてもビクともしない出で立ちを誇っていました。鬢(びん)ばらは強い風が吹いても動じない様を誇張しています。

奴という役は鬢の毛は低くなくてはいけないものです。奴たちは戦国武将の武田信玄にあやかり鬢を低くしていました。
「供奴」は白塗りの顔に隈取りをして厚綿の入ったねじ切りの立派な衣装なので、鬢は低いのですが甲羅はすっぽりで、もみ上げは塗り込みを付けて奴の性根はしっかりととらえ、かつらを大きく見せる工夫がなされているのです。


【床山:那須正利・此兵衛と供奴:撮影岩田アキラ】