せっかく結い上げた頭を壊してしまう前に写真を撮りました。
『与話情浮名横櫛』仁左衛門丈の為の与三郎。

「木更津海岸見染」伊豆屋与三郎

「木更津海岸見染」伊豆屋与三郎

「木更津海岸見染」では”袋付 二つ折”という頭。放蕩して田舎に預けられてはいますが、拵えは都会的でお洒落で品がある若旦那です。

「赤間別荘」伊豆屋与三郎

「赤間別荘」伊豆屋与三郎

「赤間別荘」出の与三郎はお富との逢引後。同じ”袋付・二つ折”ですが、色模様の後の少し乱れた雰囲気で、刷毛先を少し乱し、シケを僅かに出します。
逢引がバレた与三郎は、お富を囲っている親分に半殺しの目に会うのですが、元の頭が芝居の進行に合わせてさらに大きく乱れます。

「源氏店妾宅」切られ与三郎

「源氏店妾宅」切られ与三郎

「源氏店妾宅」はそれから3年後。身を持ち崩した与三郎はならず者です。“葺き毛のむしり 刷毛先の曲がった銀杏”で、額に傷が付いている。月代の手入れもしない町人崩れの髪型ですが、髷を二つ折風に結い上げるのが口伝とされています。根っからの悪党ではない、元は若旦那という雰囲気を微かに表す工夫です。

【かつら制作 鴨治欽吾/聞き取り 総務】