片はずしは御殿女中の代表的は髪型です。元禄以前の御殿女中は下げ髪でしたが、束ねた下げ髪では、何かと用事をする上で勝手が悪く、その下げ髪を笄(こうがい)で止めた形がこの片はずしで、笄を抜くとすぐに下げ髪になる髪型です。江戸中期以後この[片はずし]が御殿女中の代表的な髪型になっていきました。
御殿女中の女はすべてこの[片はずし]を結っていたかと言うと、そうではなく御年寄、御中臈などの奥向きの御用を勤める女達だけで、御三の間、おはした、などという下働きのものは島田髷を結っていました。
歌舞伎では武家の奥方というと[片はずし]となりますが、実際にはもっと役向きによって髪型がいろいろあったようです。江戸の庶民などは到底大奥のことなど判りませんから、御殿女中が墓参のため市中を歩いているところなどを、垣間見て舞台に取り入れたのでしょう。
【文:那須正利】