かつらの毛は、80%が人毛です。日本では今は長い髪を伸ばしている人はいませんから、中国から輸入です。

毛は腐らないので今使っている毛はいつの時代の毛かわかりません。

中国も急激な発展を遂げ毛の値段が昔よりずいぶん上がってしまいました。まだ中国の奥地には長い髪をした民族が暮らしていますが、文明が進むとどうなるかわかりませんね。

鏡獅子や連獅子に使われる毛を(から)の毛と言います。

これはチベットや中国奥地に棲むヤクという牛のような動物の毛です。

江戸時代インドを天竺、中国を唐と書いて、からと呼んでいました。

江戸時代に中国から渡ってきたので、唐の毛と呼ぶようになったのです。

獅子の他には、立役では強い役柄に主に使います。また女形の方でも結い綿、潰し島田などのふっくらした感じを出すことが出来ます。

その他には熊の毛、これは浪人の侍、「かさね」の与右衛門や「将門」の光圀などに使われます。

将門「大宅太郎光圀」

昔は「靱猿」の猿も猿の毛皮を使っていたのですが、今は動物愛護の観点から使うことが出来なくなりました。

そのほかに糸も使います。喝食(かしき)の肩糸や姫じけがそれです。また、天鵞絨(びろーど)羅紗(らしゃ)といった布を張るときもあります。

天鵞絨(びろーど)は色気があり「関の扉」の宗貞などに、羅紗は強さがでるので「対面」の工藤などに使われます。

【床山:那須正利】
【写真すべて:岩田アキラ】