舞台で使う鬘(かつら)は、初めの内はただ単に毛をつけた、つけ毛のような鬘でしたが、ストーリー性のある歌舞伎に変化していくとともに、鬘も徐々に進歩を重ねいろいろな鬘が出来上がっていきました。

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蓑のかつら

■ 蓑のかつら
銅板に毛をつける鬘は、生え際に蓑(みの)と言って毛を編んだものとつけた鬘でした。立ち役では「車引」の松王丸、梅王丸、桜丸などがそれで、女形では「芦屋道満」の葛の葉、「鳴神」の雲絶間姫などがあります。古典の歌舞伎に多く使われ、鬘が進歩した今でも古風な趣を出しこの手法が使われております。

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羽二重のかつら

■ 羽二重のかつら
初代尾上松助が「鏡山」の岩藤を演じるにあたり、この蓑の鬘では凄味が出ないからと、かつら師友五郎に考案を頼み、出か上がった鬘が羽二重(はぶたえ)という絹の生地に毛を一本一本植えつけるという手法を編み出しました。この羽二重の鬘が出来、これにより鬘が飛躍的に進歩し数多くの鬘が作られるようになりました。

【文:那須正利】